コンポストに出会ったのは、英国・ウェールズでした。東京で暮らしていた私は、結婚して広島へ移住することが決まり、いつか海外で生活したいという夢を諦められず入籍して1週間後、1年半という猶予付きでひとりイギリスへ旅立ちました。
私が滞在していたお城のような家。見えている限りが彼らの敷地。
イギリスではwwoof(ウーフ)という、農場などで労働する代わりに食と住を提供してもらえるボランティア制度を使い、ウェールズのオーガニック農家で家族の一員として暮らしていました。そこで初めて出会ったコンポスト。私は、広大な敷地内にある、歩いて5分ほどかかるガーデン内のコンポストへ生ごみがたまったバケツを持って捨てに行く係をしていました。
お父さん、お母さん、そしてしばしば彼らの子供たちが来たり、私以外のウーファー(ウーフをして働く人を「ウーファー」と呼ぶ)が滞在していたりしたため、時に多い時で大人7~8人分の生ごみを運ぶことになります。持つ手にバケツの取っ手が食い込むほど重く、それをもって歩く度に、人が捨てる食べ物の多さに心がチクリとする日々でした。
「walled garden」とよんでいた畑。ここで野菜や果実、花なども栽培している。真ん中の横にのびる壁下、一番右がコンポスト。
私が滞在していた家では、コンポストといってもただブロック三面に囲まれた場所に土が盛られ、トタンが被さっただけのとても簡易的なものでしたが、無農薬で育てた野菜を毎食料理の前に収穫し、調理して食べて、残菜はコンポストへ(もちろん野菜だけでなく肉や魚など食物も)。そしてそれらが土に還り、また畑で使われて野菜ができてまた食べる。その自然な循環が、家庭のなかに自然に組み込まれていることに感動しました。
そして、コンポストというものは、人と自然が上手に共存するための“共同作業”だなと感じたのです。この共同作業のおかげで、心のチクリも和らぐ気もしました。私が滞在していた家庭だけではなく、お邪魔したどこの家でもコンポストがガーデンの片隅に設けられ、当たり前に彼らの生活に根付いているのを見て、広島へ戻ったら自分も始めようと決意して帰国しました。
キッチン。お父さんがいつも美味しい料理を食べさせてくれた。
帰国から数年が経ち、ウェールズのウェルシュブランケットなどを取り扱うライフスタイルショップ「cymry(カムリ)」というオンラインショップを立ち上げ、現地で体感してきたコンポスト生活を始めようと思っていたところ、縁あって「せとうちコンポスト」に出会いました。
基材はすべて広島県産、そして間伐材でつくられた本体はビスなどを使わずすべて土に還ることができる、そしてデザインもシンプルで洗練されていてベンチやテーブルのように使うこともできる、というコンセプトに共感して購入させていただき、縁側テラスに置いて使用しています。
せとうちコンポストが我が家にきた頃、縁側でしばらく子どもの隠れ家になっていた。
我が家の「せとうちコンポスト」は、2人の子供たちの砂場になっていることもしばしば。掘り出てくるバナナの皮を見つけては「このまえぼくがたべたバナナ!」と宝物を見つけたときのように喜んでいます。今入れている土が初めてできたら、子供たちと一緒に野菜を育てる予定です。
私がウェールズで見てきた人と自然との共同作業、そしてその循環をまだ小さな彼らにも少しずつ伝えていくことで、いつかウェールズのように日本のまちでも当たり前にコンポストのある生活が根付いていくといいなと思っています。
私がショベルで土をかき混ぜているのを見ると、自分もやりたいと必ず子供たちが手伝って(遊んで?)くれる。
暮らしを耕す人_花房繭記さん Mayuki Hanafusa
cymry